スペシャルインタビュー:開業1年余りでトップランカーとなった東京・東小金井「くじら食堂」ラーメン店主のハングリーな仲間力。

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東小金井・くじら食堂は「ラーメンWalkerグランプリ2014」で「全国新人賞部門第1位」「全国総合ランキング第3位」と異例のダブル受賞を果たし、開店1年余りでトップランカーに躍り出た新店。
その美味しさは、ラーメンフリークの間で瞬く間に広まり、グランプリ発表前の時点で既に「1位確実」と言われていたほど。

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店内に入るとまず、店主の明るい声が響き渡る。
お客様一人ひとりに対して「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と絶えず顔を確認しながら発せられる店主の声は、骨太ながら社交的な人気者といった印象が特徴的。

2013年9月に独立、現在38歳・新進気鋭店主・下村さんにお話を伺った。

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「営業職が好きなんです。仕事を通して相手を真剣に好きになっていけることが楽しくて夢中でした。」

ラーメン業界に入る前は、食肉業で営業マンとして従事。
購買人として牛を1頭丸々仕入れる、社内トップの職務を任されるまでになり、都内有数の有名飲食店やテレビ局などとも取引するほどの手腕であった。

「営業が好きなんです。仕事を通して人と喋ること、人前に出ることが好きで、14年間続けました。
営業でおもしろいのは、全然知らない人が自分に気を緩めた瞬間が楽しいです。
そこから関係が深まり、その人を真剣に好きになっていけることがとても楽しいですね。
営業は本当に夢中でやりましたね。今でもやりたいと思うくらいですよ(笑)」

しかし、トップであるということは頭打ちである。何か他のことにチャレンジしたいという想いがあった。

「せっかくなら自分の好きなことでチャレンジしたいと思い「ラーメン」の道を選びました。」

修行するために選んだ店は『麺や 七彩』。化学調味料無添加の「無化調ラーメン」にこだわった東京・中野区の名店。

「『麺や 七彩』は今でも人気店ですが、当時はラーメンフリークがよく通う店として雑誌の露出がとても多かったんです。流行っている味を知りたかった。お客さんが好む味というのはどんなものだろうと、修行する上で最初に知りたかったのは、そこでしたね。」

まず、お客さんが何を求めているかを徹底的に知るという、元営業マンならではの発想から始まる。
そして、人と話すことが好きという気質が、独自の仲間作りへと発展した。

「これきりにならない関係でいましょうね。せっかく出会ったのですから。」

「麺や 七彩」での修行中、他店の店主やラーメンフリークと接する機会を積極的に増やしていったという。

「ラーメンが好きだから、ラーメン店やフリークの方達と仲良くするのが楽しくて仕方なかった。
修行当初は、1年で独立しようと考えていました。でも、そんな簡単じゃない。出来なかった。3年かかったのは自信がつかなかったからです。
しかし、その間に多くの方と知り合えたことは大きな財産になりました。仲良くなった方達がいろいろと助言してくれたり、独立した時に食べにきてくれたりする。いろんな方から勉強させて頂いています。」

くじら食堂は現在、公式Twitterアカウントで開店情報などを配信しているが、他ラーメン店のお知らせも拡散するなど、店舗同士の交流も大切にしている。
また、ラーメンフリークとの交流も盛んで、人間関係に重きを置いていることがうかがえる。

「これきりにならない関係でいましょうね。と言うことがよくあります。営業時代からそうですが、せっかくの縁がもったいないじゃないですか。
仲良くしたい人とは、“これきりにならないように”といつも思っています。」

「これきり」にならないためにはお互いに成長していなければならない。
この言葉が独自の仲間作りを成功させている秘訣だ。何か手助けしたくなる、同時に言われた側も応援された気になる、店主の人柄が表れた一言。

「どうしたら食べてもらえるか。それしかなかった。」

3年の修行後、独立し、東京・東小金井に「くじら食堂」をオープンすることになる。
駅前から徒歩1分ではあるが、駅前に建物自体が非常に少なく、閑散とした印象のエリアだ。
一見すると人が集まりそうにない場所に立地しているが、そこには計算された理由があった。

「武蔵野界隈で探していて、いろんな場所を見て周りました。
一日中その場所に立って人通りを確認したところ、この立地は驚く程人通りが多かったんです。
閑散とした印象なのは、建物が少なく歩道が広いからで、人通りは意外に多い場所なんです。
その割に飲食店がほとんど無い。居抜き物件だったので、前の店主からも話しを聞き、集客見込みを確認しました。現在の営業時間も需要に合わせて設定しています。夜になると開いている飲食店がほとんどなくなり、うちしか営業していないような状態です。
どうしたら食べてもらえるか。お店に気づいてもらいたい、多くの人に食べてもらいたいという一心でした。」

「開業当時と今とでは味は全然違う。同じ味でずっと止まる気はない。」

くじら食堂のラーメンは毎日少しずつ味に変化がある。
気づかれないくらいの微妙な変化だ。少しずつ試作や改良を施しながら成長している。

「開業当時と味は全然違いますよ。
まずは修行中に溜まっていったアイデアを試していきましたが、他の店主さんと話していくなかで気持ちが変わっていき、どんどん味は変わりました。開店してからお客さんから教わることもすごく多かったです。
煮干しのいれ方から、配合など、こうしたらどうだろうとどんどん興味が出てきてしまい、今も毎日少しずつ変えています。
同じ味でずっと止まる気はないですね。美味しくなればいいとシンプルに考えています。
うちで同じ味は食べられないですよ。」

『塩味玉らー麺』
チャーシューは2種類。煮干しと鶏ガラのWスープを元にさまざまな出汁をブレンドし、化学調味料無添加で仕上げている。

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『油そば』
こちらは濃い味付けが特徴的で麺のもっちり感と好相性。
「適材適所で化学調味料も必要です。学生さんのお客さんにも人気ですよ。食べる人が美味しいと思ってくれることが一番です。」

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くじら食堂を語る上でその自家製麺を特徴として挙げる人は非常に多い。
オープン前に店主自ら店内で製麺し、注文を受けた後、最後にひとつひとつ手ごねで仕上げる。手間も体力も必要な作業。

店舗内の製麺機で毎日作られる。

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「太い麺は打ち立ての方が美味しいと信じているので、納得のいく美味しいものを提供したいだけです。
最近は固めの麺が人気なので、少し固めに仕上げています。いつもお客様が美味しいと思って貰えるものを提供したいという気持ちが一番強いです。食べ手に寄りたい。食べ手が美味しいと思えるものが良い物です。そう思っています。」

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その日の温度や湿度によって製麺レシピは毎日調整するという。
「夏と冬では粉の具合が全然違うんですよ。天候によっても変わりますからレシピを固定することは出来ません。」

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麺はオープンの数時間前に仕上がる。出来立ての麺を食することが出来るようになっている。

「寝ている時以外ラーメンのことを考えてる。ラーメン以外に好きな食べ物ないよ。」

ラーメンフリークから熱い評価を受け、見える景色は変わったのだろうか。

「全然、いつも不安です。大丈夫かな美味しいかなと心配で、お客さんに何度か聞く事があるくらい。
だから尚更美味しくしようと思います。毎日、寝ている時以外ラーメンのことを考えてる。トイレにも参考書を置いてるくらいですから。(笑)ずっと勉強したり考えたり、またそうしていることが好きで夢中です。
今、好きな食べ物聞かれても“ラーメン”ですね。他にないよ、ラーメンが好き。(笑)」

謙虚な物腰で語るが、店主のハードワークはカウンター越しでも感じ取ることが出来る。
オープン前に製麺、1食ごとに自身で麺を手ごねして提供、深夜1時まで営業というハードスケジュールには体力だけでなく精神的なタフさも要求される。
しかし、口をついて出る言葉はバイタリティが溢れて止まらない。

「やってみたいことが次から次へと溢れてきます。ラーメンの調合に関しても四六時中考えていますが、店舗についても考えていることはいくつかありますね。都心への進出ももちろんですが、世界進出もしてみたいし、焼肉業界も実はやりたいんです。肉業界はあんなに夢中になった世界ですから。
ラーメンは今や世界に通ずるグルメになっていますから、世界は挑戦してみたいですね。そんな風に希望を持てるのもラーメン業界ならではですね。」

「お客様は絶対、それは営業もラーメンづくりも変わらない。」

美味しさに対して誠実に研究熱心でいるための秘訣は何か聞いてみた。

「わたしにとって、ラーメン作りは今、生活していく上での最強の手段、武器になっている。だからシンプルに一番は何のためかと立ち返ります。変な風に芯を曲げないように、あえて「自分の生活のため」と考えています。
「自分の生活のため」と思うとシンプルに誠実に美味しいものを作って喜んでもらうしかないんですよね。
いや、喜んでくれたら嬉しいなくらいしか、まだ言えないですね。
営業の時にポリシーとして持っていたのは「お客様は絶対」ということ。常識以外、“絶対”ですね。これは従業員にも言います。
誰から給料もらってるのかということを考えれば当然です。お客様に喜んでもらうということの根本になっているかもしれません。」

全力で挑むものづくり精神と営業マン気質ならではのハングリーな好奇心、周囲を巻き込んでいく店主のバイタリティに今後も目が離せない。

【店舗概要】
くじら食堂
住所:東京都小金井市梶野町5-1-19
JR中央線「東小金井」駅下車、北口に出て、徒歩3分。
東小金井駅から175m
営業時間:[月〜金]18:00〜翌1:00(麺orスープ売り切れ次第終了)
[土] 11:30〜14:30
定休日:日曜日
TEL:042-401-2901
※店鋪情報は掲載時点のものです。

※すべての商標は、各々の所有者の商標または登録商標です。

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