フランスが京都に保有するアーティスト・イン・レジデンス『ヴィラ九条山』がリニューアルオープン。9月より新規レジデントを迎え入れ、創作活動をスタート。

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アンスティチュ・フランセ日本(館長:ジャン=ジャック・ガルニエ、所在地:東京都新宿区市)は、フランスが国外に保有する3つのアーティスト・イン・レジデンスのひとつである、ヴィラ九条山(住所:京都市山科区日ノ岡夷谷町17-22)をリニューアルオープンすることを発表した。
ヴィラ九条山は、日本におけるフランスの文化外交の推進主体であるアンスティチュ・フランセ日本の5つの支部のひとつで、1992年に建築家の加藤邦男氏の設計により京都・東山の丘の上に建てられた、最大級のフランスの公式文化施設。

ここでは、改修工事後の9月より第1期レジデント(滞在者)を迎え入れ、芸術創作活動のあらゆる分野から独自のプロジェクトを展開する。滞在期間は2ヶ月から6ヶ月間に渡り、毎年フランス人と日本人の新規レジデント約12名を受け入れていく。



<ヴィラ九条山について>
ヴィラ九条山の歴史
ヴィラ九条山は1992年の創設以来、日本に特化した自らの構想の実現を企てるクリエイターや研究者を受け入れてきた。分野横断的な交流の場であるヴィラ九条山は、フランスと日本の文化的対話を深めることを使命とし、京都のみならず日本全国の芸術界、学界、文化界と仕事関係を結ぶよう奨励される。これまで、現代アートと人文社会科学など、あわせて20前後の芸術分野に跨る250人以上のレジデントを迎え入れてきた。過去には、スーザン・バージュ(ダンス)、ジャン=フィリップ・トゥーサン(文学)、ドミニク・ゴンザレス=フォステール(造形芸術)、アントワーヌ・ダガタ(写真)といったアーティストもヴィラ九条山に滞在し、創作活動を行った。

<ヴィラ九条山のリニューアルについて>
日仏2人組の館長を新たに任命
リニューアルにあたり、館長にはクリスチャン・メルリオが、企画開発・渉外担当として、大江ゴティニ純子が特任館長に就任し、ヴィラ九条山を指揮する。2人が体現する共同運営は、リニューアルの象徴的存在であり、日本とフランスの文化的対話と相互繁栄というヴィラ九条山の本来の価値観とアイデンティティを示す。
2人は10年以上前にもパリのパレ・ド・トーキョーのレジンデンス式創作ラボ「パヴィヨン・ヌフリズOBC」で、クリスチャン・メルリオがレジデンス・プログラム責任者を、大江ゴティニ純子が制作・企画開発責任者を務めるなど、かねてから協力関係にある。その後も映画、パフォーミングアーツ、展覧会などの領域で、日本と結びついた各種プロジェクトでもその協力関係は積み重ねられている。

ピエール・ベルジェ氏の支援により改装を実施
ヴィラ九条山の改装はピエール・ベルジェ氏の資金援助を受けて実施される。ピエール・ベルジェ氏は「メセナをするには、好きにならなければならない」と以前から自ら惚れ込んだプロジェクトを支援してきた。例えば、ポンピドー・センターにある国立近代美術館の常設展スペースの整備、ルーヴル美術館がパトリス・シェローに白紙委任の形で依頼したイベント企画、さらにはパリ・オペラ座でのリヒャルト・ワグナー作『ニーベルングの指環』の上演など。
また、フィリップ・グラスやジョン・ケージなどの作曲家を支援し、彼らのパリでの処女コンサートをプロデュースしたほか、クロード・レジやピーター・ブルックなどの演出家の支援も行っている。特に、ロバート・ウィルソンに対しては全面的な支援を与え、彼の傑作『浜辺のアインシュタイン』のパリ再上演を実現している。2001年には「文化芸術の偉大な擁護者」の称号を授けられたピエール・ベルジェ氏は、現在では2002年に設立されたピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン財団の会長を務めている。同財団の使命はイヴ・サンローランの作品を保存し、その輝きを広く伝えるとともに、多分野横断的なパリの現代芸術祭「フェスティバル・ドトーヌ(秋の祭典)」やパレ・ド・トーキョーの現代アート企画「レ・モジュール」などを支援し、現代創作を奨励することにある。

<レジデンス・プログラムの刷新について>
2つの新たなプログラムを導入
ヴィラ九条山は20を超える多種多様な分野に開かれたレジデンス。リニューアルを機に、2つの新しいプログラムを打ち出す。いずれもベタンクール・シューラー財団の厚意による3年間の特別支援により実現され、レジデント募集の工芸分野への門戸開放とフランス人アーティストと日本人アーティスト2人1組を対象とするレジデンス・プログラム「ヴィラ九条山・デュオ」を導入する。工芸分野における日仏交流の強化にあっては、日本の様々な地域、特に京都のデザイン、モード、伝統工芸など、地元に根付いた産業を担う企業との協働関係を築くことが欠かせません。また、日仏デュオの新プログラムへの参加によって、積極的なノウハウや意見交換を通し、やがては日本のクリエイターがフランスに興味を持ち、ヴィラ九条山が彼らとフランスの代表機関との架け橋になることを願っている。
新たなプロジェクトを達成するため、ヴィラ九条山では芸術面、資金面及び文化面における独自のパートナーシップによる協働関係を拠り所とし、資金提供者やプログラムに参画する民間企業との良好な関係構築を目指す。また、大学との連携や後援体制の強化を目的とした、研究活動の受け入れ、共同制作を推進し、プロジェクトや作品の普及を図る。なお、日本でのレジデンスの期間中あるいは終了後に実現された作品は、メイド・イン『ヴィラ九条山』のラベルが付与され、日本、フランスはもとより海外の展覧会、フェスティバル、出版、音楽イベントなどで発表していく。
また、リニューアルオープンに際し、レジデンス・プログラムにとって不可欠な「プロセス」をグローバルな視点から見直した。今後は、京都出発前のプロジェクトの前段階としての準備期間、京都での制作期間、そして最後に帰国後の報告と発表の期間の3つの段階で構成される予定。

2014年及び2015年のレジデントについて
600件を超える応募書類の中から、ヴィラ九条山選考委員会は18件のプロジェクトを選出し、合格者は2014年から15年にかけて、ヴィラ九条山で2ヶ月から6ヶ月のレジデント生活を送る。
なお、そのうち2件のプロジェクトはフランス人アーティストと日本人アーティストの2人1組で実施されることになるほか、工芸分野への門戸開放を明確に打ち出すため、ヴィラ九条山はフランスが得意とする工芸部門から5名の創作家を迎え入れることになる。

■選考委員会のメンバー ※敬称略

・グザヴィエ・ダルコス(アンスティチュ・フランセ・パリ本部理事長)
・シドネ・ペロル(フランス大使館文化参事官次席兼アンスティチュ・フランセ日本副代表)
・ヴァレリー・フルラン(外務・国際協力省文化交流・研究副局長)
・イザベル・マンシ(文化・コミュニケーション省芸術創作監督官)
・エドヴィージュ・ソートロー(ベタンクール・シューラー財団文化メセナ責任者)
・ピエール・ベルジェ
・長谷川崇子(日動画廊パリ店長)
・オリヴィエ・ガベ(パリ装飾芸術美術館館長)

ベタンクール・シューラー財団による特別支援
これらのプログラムはベタンクール・シューラー財団の3年間の特別支援により導入される。ベタンクール・シューラー財団は、アンドレ&リリアンヌ・ベタンクール夫妻とその娘フランソワーズ・ベタンクール・メイエールにより25年前に創設。「才能に翼を与え」フランスの栄光に貢献することを旨とし、才能を羽ばたかせるための支援を通じて公益に資すこと、知識の限界を押し広げ、現代社会のいくつかの問題に対する具体的な回答を促すこと、創作活動、イノベーション、研究、進歩を奨励すること、社会的影響力の大きな革新的で実行可能なソリューションの出現を促すこと、持続的で個別的な支援を提供することで、プロジェクトの成功と自立化、能力の移転、影響評価を促進することがベタンクール・シューラー財団の行動原理となっている。生命科学、文化、連帯という三つの活動分野においてその本領を発揮し、公益性を重視し、社会的責任を目標とする精神と活動方式を規定する信念に沿ってその活動を展開している。

<ヴィラ九条山の概要>
住所 :京都市山科区日ノ岡夷谷町17-22
敷地面積:2,515.69㎡
建築面積:736.28㎡
延床面積:1,164.27㎡

 

【参考①:2014年および2015年レジデントのプロフィール】

■2014年度レジデント
グレゴリー・シャトンスキー(デジタル・アート)
ソルボンヌ大学でバーチャルリアリティとテクノロジーの存在論に関する研究を行ったあと、パリ国立美術学院のマルチメディア科マスターコースに進学。現在はパリ第五大学と国立現代芸術スタジオ「ル・フレノワ」で教鞭をとっており、2014年にはアンギアン・レ・バン芸術センターで個展を開催しています。
ヴィラ九条山では、架空の多作きわまりないロックグループの名称である『Capture』と題されたプロジェクトを展開。岐阜県大垣市の情報科学芸術大学院大学[IAMAS]の協力により、開発した歌声合成システムを取り入れることになっています。また、空想物語を出発点として構築されたフィクション『Telofossile/テロフォシル』にも注力します。

アンヌ・ボナン&トマ・クレール(美術評論・キュレーション)
アンヌ・ボナンは2009年にリカール企業財団で「Pragmatismus & Romantismus(プラグマティズム&ロマンティズム)」展を、ジェンヌヴィリエのエドゥアール・マネ・ギャラリーで「Sauvagerie domestique(仮題:家庭内蛮行)」展を企画しました。2012年にはレンヌ市で開催の現代アート・ビエンナーレ「アトリエ・ド・レンヌ」でキュレーター兼ディレクターを務めたほか、各種美術雑誌(Zero-Deux、Art press、Mouvementなど)に寄稿しています。
近代文学のアグレジェ(上級教員資格者)であるトマ・クレールは教師を務める傍ら、作家でもあります。2005年にはフランス人作家モーリス・サックスの伝記『Maurice Sachs le desoeuvre(仮題:所在なきモーリス・サックス)』を出版し、注目を集めました。また、自伝を定義することの難しさを取り上げたエッセー『Ecrits personnels(仮題:私的な著作)』を執筆しているほか、最近では、住いのあるパリ10区の全体像を捉えた体系的なガイドブック『Paris, musee du XXIe siecle(仮題:パリ、21世紀の美術館)』を著しています。また、ヴィトリー=シュル=セーヌにあるヴァル・ド・マルヌ現代美術館(MAC/VAL)、ポンピドゥー・センターのイベント「ヌーヴォー・フェスティバル」、ジェンヌヴィリエ劇場、パレ・ド・トーキョーなどでパフォーマンスも行っています。
2人がヴィラ九条山のために共同で企画しているプロジェクトは、ロラン・バルトの1970年の日本旅行と『表徴の帝国』(『記号の国』)の出版を出発点とするものです。二人の研究活動は現代日本におけるロラン・バルトの受容と彼の現代性に眼を向けたものとなり、美術、文学、学術、演劇を巡る同時代的状況を見渡す機会となります。

ゴリアト・ディエーヴル&カンタン・ヴォロ(デザイン)
ゴリアト・ディエーヴルは造形芸術に重点をおいた文系の教育を受け、パリ・ヴァル・ド・マルヌ建築学院にしばらく在籍したあと、国立工業デザイン高等学院(ENSCI)に入学しました。
カンタン・ヴォロは理系の教育を受け、高等デザイン学院に在籍したあと、ENSCIに入学しました。
5年前からユニットを組んでいる2人のデザイナーはエルメスやデザイン家具のチナなどの仕事を手掛けています。また、ギャラリー・ゴスレ、ギャラリー・ロジェ・タトールや「火と土の芸術研究センター(CRAFT)」と一緒に研究活動も行っています。身の回りのものを隠すための一組のクロッシュ(ド

ームカバー)からなるプロジェクト『Fantome/ファントム』は2011年、チナ社のコンペのインテリア
小物部門で第2位に輝きました。また、彼らの陶芸とタペストリーのノウハウをクロス・オーバーさせる斬新な作品は、フランスの国際タペストリー・センターが主宰する2013年度グランプリを受賞しました。
この作品シリーズの構想を発端とするのがヴィラ九条山での二人のプロジェクト。明確な機能を有していないオブジェには一種の静けさが付与されます。京都の杉本家住宅を知ったことで、二人の探求は日本における空間の中立性と瞑想的な一連のオブジェの創作に関わるものとなります。

マニュエラ・ポール=カヴァリエ(工芸)
木製品への金箔貼りの美術工芸家であるマニュエラ・ポール=カヴァリエはインテリアデザイナーのために金の古色仕上げを行うとともに、顔料や金箔を用いた抽象作品を制作しています。彼女は13世紀や18世紀のフランス、イタリアの古い技法を用いており、フランスの工芸業界の「認定工芸師」としてフランスの国立美術館で国の収蔵作品の修復作業にもあたっています。
ヴィラ九条山でのプロジェクトは2つの軸を中心としたものとなります。1つは、木や漆の上に金箔を貼る古来の技術を巡る研究、知識の共有と創作で、もう1つは民芸運動、岡倉天心の『茶の本』や谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に触発された無駄のない仕草をテーマとした創作活動です。

■2015年度レジデント
アンドリュー・トッド&萩野紀一郎(建築)
アンドリュー・トッドはアルドロ城のエリザベス朝の劇場やリス=オランジスのドリームシアターなど、劇場に関する調査・設計で広く知られています。また竹と直交集成板(CLT)の使用に関してはフランスではパイオニア的存在で、2011年には芸術文化勲章シュヴァリエ章を授与されています。
萩野紀一郎は大阪・東京近郊で住宅設計を手掛けたあと、5年前から能登半島に関わる仕事に打ち込んでいます。能登半島地震のあと、萩野は竹と紙と土を用いた昔ながらの建築技法のスペシャリストとなり、これを伝統建築の修復に役立てています。アンドリュー・トッドと萩野紀一郎は1980年代にペンシルベニア大学で一緒に学んだ間柄です。
ペアを組んでのヴィラ九条山でのレジデンスの目的は、竹という共通の素材の使用を通して、日仏の建築文化の歩み寄りと相互理解を発展させることにあります。

オロール・ティブー(工芸・ファッション)
デュペレ応用芸術高等学院と国立装飾芸術高等学院(アールデコ)の出身の舞台芸術の衣装デザイナー。第21回イエール・ファッション・フェスティバルのグランプリと2013年度パリ市デザイン大賞に輝いています。彼女の仕事は折りあるごとに紹介され、ヨーロッパのほか、日本や米国でもリミティッドエディションが販売されています。
ヴィラ九条山でのプロジェクトは「友禅」と「型染め」を新しい視点で見直すもの。こうした絹織物の染色や型紙と防染糊を用いた染めという日本の伝統技術は、並外れたグラフィカルな繊細さを可能にします。地元の工芸家と協力し、次回コレクションのためのエコロジカルなテキスタイルのリミティッドエディションを制作することを目指します。

ピエール=ジャン・ジルー(映画)
アーティストで映画監督のピエール=ジャン・ジルーはリヨン国立美術学院で学んだあと、英国とマルセイユ=リュミニー美術学院でも学びました。フォトグラファーを経て、映像を中心とした活動に移行。自作のインスタレーションや映像作品を各種フェスティバル、ポンピドー・センター、MAC/VAL、バス・ノルマンディー地方現代アートセンター、イヴリー現代アートセンター(CREDAC)などで発表しています。
ヴィラ九条山で取り組むことになる『Station to station』は拡張現実(AR)を用いたビデオプロジェクトで、ドキュメンタリーとフィクションが入り交じった作品となります。出発点となるのは都市や社会の現実で、これを映像・写真に収め、次にCGで手が加えられることになります。

エマニュエル・ビュルドー(映画)
『カイエ・デュ・シネマ』誌の元編集長(2004年-2009年)で、現在では、国際映画祭FIDマルセイユの理事会メンバーであり、ラ・ロッシュ=シュル=ヨン国際映画祭のプログラミング責任者です。数多くの新聞・雑誌に寄稿するとともに、2007年からは、Capprici社から出版されている映画に関するエッセー集の監修を担当しています。また、映画監督のインタビュー本を数冊とヴィンセント・ミネリに関するエッセーも発表しています。
ヴィラ九条山でのプロジェクトは、アメリカ人映画監督ジョセフ・フォン・スタンバーグの最後の映画で、京都の岡崎公園で撮影された『アナタハン』の徹底した解読を提案するものです。

ヴァンサン・ロマニー(美術評論)
ヴァンサン・ロマニーはインディペンデント・キュレーターで、フリーの編集者です。『Aires de Jeux(遊び場)』展を企画し、Infolio社から『Anthologie, aires de jeux d’artistes(仮題:アンソロジー、アーティスたちの遊び場)』を刊行しています。また、リカール企業財団とギャラリー「Air de Paris」のキュレーターを務めた経験もあります。「Hypertexte」誌や「Mouvement」誌などの雑誌に寄稿しているほか、資料収集センター「美術評論アーカイブ」のためにも文章を書いています。2013年からはマルセイユ美術学院で哲学と美術を教えています。
ヴィラ九条山でのプロジェクトは遊び場に関する考察を継続するもので、都市計画の対象としての遊び場と日本における現代アートの美意識、理論と実践の動向との関係性の把握に寄与することが目指されます。

ダミアン・ジャレ&名和晃平(ダンス/パフォーマンス)
ダミアン・ジャレは演劇の勉強を始めたあと、コンテンポラリーダンスに進路を変更し、ニューヨークのトリシャ・ブラウン・スタジオで研鑽を積みました。ダンサーとしては振付家シディ・ラルビ・シェルカウイと密接な協力関係にあり、ドラマツルギー、演出や音楽にも手を貸しています。また、演出家アルチュール・ノジシエルとも協力関係にあり、いくつかの作品の振り付けを担当。2013年には、芸術文化勲章シュヴァリエ章を受章しています。
名和晃平は日本における現代アートの第一人者の1人です。その仕事は細胞(cell)とピクセル(pixel)を組み合わせた造語である《PixCell》というコンセプトを様々な形で展開するオブジェ制作が中心となっています。ブリスベンでの第6回アジア・パシフィック・トリエンナーレに参加したほか、第14回ア

ジアン・アート・ビエンナーレ・バングラデシュには日本代表として出展し、グランプリを獲得。また、
京都の南にあるサンドイッチ工場跡を整備し、クリエイター、アーティスト、プランナーや建築家を集めて、共同プロジェクトを行うための創作プラットフォームを立ち上げています。
ヴィラ九条山での二人のプロジェクトは2つの世界を行き来する紐帯としての身体を探求するものとなります。ダンサーの身体が彫刻=人口装具の助けを借りて変容させられ、身体の潜在能力を新たな機能性へと拡大することが目指されます。

フランソワ・アザンブール(デザイン)
環境デザイナー、インテリアデザイナーで教員でもあるフランソワ・アザンブールは、カン美術学院と国立応用芸術工芸高等学院(ENSAAMA)で学びました。1988年にはフランス財団の奨学金を獲得、1999年にはその年の若手デザイナーに選ばれるとともに、2004年にはパリ市デザイン大賞を受賞しています。ヴィラ・ノアイユは2012年に彼の回顧展を開催。彼の仕事はギャラリー・クレオ、カッペリーニのほか、エルメス、エルメス・プティ・アッシュ、リーン・ロゼ、チナなどにより製品化されています。
ヴィラ九条山でのプロジェクトは、職人仕事と産業技術を組み合わせた新しい木工表現の探求を目的としています。得られた成果は革新的なオブジェのデザインに関する考察の基礎となり、そこでは職人仕事は、その柔軟性により、産業の実験室として機能することとなります。

イリス・ド・ムウイ(文学)
イリス・ド・ムウイはイラストレーターで、ペナンゲン学院でグラフィックアートとデジタルデザインを学びました。児童書を手掛けるとともに、ファッション雑誌、高級ブランド(エルメス)やパリのボン・マルシェなどのブティックのために仕事をしています。Honore(オノレ)という名の犬のキャラクターを作り上げ(ナイーブ出版社)、数多くの本のイラストを描いています。彼女の最新作『Petite s.ur(仮題:妹)』は2014年にL'Ecole des loisirs社から刊行されています。
ヴィラ九条山でのプロジェクトは、関西地方に出没する魔物、霊魂やその他の化け物の足跡を追い、イリス・ド・ムウイは架空のキャラクターが大勢登場するブック・アートの制作を目指しています。

ジャン=バティスト・デル・アモ(文学)
ジャン=バティスト・デル・アモは小説家で、2006年には、短編小説『Ne rien faire(仮題:何もしない)』でフランス語若手作家賞を受賞しています。この小説はアフリカでHIV撲滅に取り組む非営利団体での経験に基づき書かれたものです。2008年には長編処女作『Une Education libertine(仮題:放蕩教育)』がガリマール社から出版され、2009年度のゴンクール処女長編賞に輝いています。同年、フランソワ・モーリアック賞を受賞。2010年から11年にかけてはヴィラ・メディチに滞在しています。ガリマール社からは、さらに2冊の長編小説『Le sel(仮題:塩)』(2012)と『Pornographia(仮題:ポルノグラフィア)』(2013)を刊行しています。
神道と禅の歴史が色濃く残る京都における、ヴィラ九条山での彼のプロジェクトは、身体と彷徨や都市空間との関係性を探り、空虚や即自存在の不在という概念や、日本の文化・文学における死、エロチシズム、暴力との特別な関係が考察されることになります。

ミリン・グエン(工芸)
デュペレ学院で繊維工芸を、オリヴィエ・ド・セール学院(国立応用芸術工芸高等学院)で金属工芸を学んだ銅系金属の旋盤加工のスペシャリストで、2002年からこの珍しい技術を中心に据えてオブジェやアクセサリーの創作に励んでいます。2013年には、「手の賢さに捧げるリリアンヌ・ベタンクール賞」を受賞。
ヴィラ九条山では秘密の仕掛けをテーマに仕事をし、その利用、課題点や神秘性を探るとともに、性質の異なったオブジェを制作します。つまり、一連の彫刻、宝飾品コレクションや遊びと関連したオブジェ・シリーズなどです。

ネリー・ソーニエ(工芸)
14才の時に羽根細工に手を染めたネリー・ソーニエはオリヴィエ・ド・セール学院(国立応用芸術工芸高等学院)で学びました。ジャン=ポール・ゴルティエとは、17年に及ぶ期間中に、いくつかのコレクションで一緒に仕事をしています。また、ニナ・リッチのオリヴィエ・ティスケンス、ジバンシィのリカルド・ティッシ、ジャン・シャルル・ド・カステルバジャック、パコ・ラバンヌやジェローム・ドレフュスとも一緒に働いています。
ヴィラ九条山でのプロジェクトは日本の美術工芸家と協力し、男女ハイブリッドのカラーコードのテキスタイル・モチーフを創作すること。モチーフは、こうした新しい連携を象徴する生地を作り出すために解釈し直され、お気に入りの素材である羽根がテキスタイルの構成の中に組み入れられます。

セリーヌ・シルヴェストル(工芸)
リヨンの専門工房で宝飾品加工の伝統的修業を終えたあと、応用芸術教育開発協会において現代ジュエリーの教育を受けました。最近では、ローランス・ヴェルディエとガラテ・ペストルと一緒に、現代ジュエリーの新しい国際的イベント「Les circuits bijoux」のキュレーションを務めています。
日本には金属象眼や装飾に関するいくつもの伝統的技法があり、ヴィラ九条山滞在中にこれから着想を得て、ジュエリーのコレクションとレパートリーの開発を目指します。

アルメル・ドゥーセとマチュー・メッツガー(音楽)
アルメル・ドゥーセはダンサーにしてミュージシャンです。舞台芸術の学士号を取得したあと、アンジェ国立現代舞踊センター(CNDC)の教育プログラムに登録し、ダンスに関する彼女の実践と考察を育むことになる数多くの振付家に出会いました。その中には、アラン・ビュファールとベルナルド・モンテがいます。これと並行して、ドゥーセはアコーデオン奏者としての活動も続け、サックス奏者のマチュー・メッツガーと組んで、デュオ《Rhizottome(リゾットム)》の仕事を発展させています。
マチュー・メッツガーは16年間に渡ってフィリップ・ディ・ベタのもとでサクソフォーンを学んだあと、2003年にポワティエ大学で音楽学の修士号を取得。2008年にはルイ・スクラヴィスのクインテットに入り、その後2009年にはフランス国立ジャズオーケストラに入団しています。
ヴィラ九条山では、2人は日本での出会いや体験、日本のミュージシャンとの交流をもとに、デュオのためのレパートリーの作曲にあたります。

ジョルジュ・ラヴォーダン(演劇)
俳優、劇作家、演出家であり、アルプ国立演劇センターの共同ディレクター、グルノーブル文化会館館長、ヴィルユルバンヌ国立民衆劇場(TNP)の共同ディレクターを歴任。1996年から2007年にかけてはオデオン・ヨローッパ劇場(オデオン座)のディレクターを務めました。30年以上前から舞台公演や講演会のため何度も来日しています。2011年には、ルイジ・ピランデルロ作『山の巨人たち』を東京の新国立劇場で日本の一流俳優と組んで上演しています。
日本での仕事の経験とActes Sud社から出版されたモニック・ボリー著『Le fantome, ou le theatre qui doute(仮題:亡霊、あるいは疑いを抱く演劇)』に基づき、ラヴォーダンがヴィラ九条山で実施する微妙な側面を備えた調査は、記憶と幻が交差する能楽、メキシコのシャーマニズム、メキシコ西部のウイチョル族、ギリシャ演劇とシェークスピア演劇の間のつながりに関するものとなります。

【参考②:館長プロフィール】
クリスチャン・メルリオ
1963年生まれ。ブールジュ国立高等美術学院卒で、アングレーム、ナンシーやブールジュを始めとするフランスのいくつかの美術学校で映画とビデオを教えてきました。映像作家としては、1994年から95年にかけて、ローマのヴィラ・メディチのレジデント研究員を務めています。金沢美術工芸大学の客員教授として1998年に初来日。以降、仕事上のミッションやアートプロジェクトのために日本には何度も滞在しています。1998年からは、映画と現代アートが交差する地点に位置する映像作品の普及プロジェクトに協力し、《pointligneplan》(点・線・面)と言う名を冠した上映会、展覧会、シンポジウムや出版事業の企画運営に当たっています。2002年には、当時オープンしたばかりのパリのパレ・ド・トーキョーのレジデンス式創作ラボ「パヴィオン・ヌフリズOBC」にレジデンス・プログラム責任者として就任。この創作ラボを率いるアンジュ・レッチアの傍らで、レジデント・アーティストのためのワークショップ、展示会や出版をフランスの国内外で企画。2011年にはヴィラ九条山にレジデントとして滞在し、京都大原を舞台にした映画『スローライフ』を監督しています。これは彼の長編映画6作目にあたり、2013年に劇場公開されました。

大江ゴティニ純子
1973年生まれ、上智大学外国語学部フランス語学科卒業。幼少期をフランスで過ごした後、1996年より再びパリに住み、アート・プロデューサーとして活動。フランス政府の奨学生として、日本人で初めてパリ・ドフィーヌ大学大学院で文化企業経営(アート・マネージメント)の専門修士を取得しています。また、パリのフランス国立デザイン高等専門学校(Ecole Boulle)でデザイン史を学び、在日フランス大使館文化部、パリ日本文化会館事業部など日仏文化交流の現場において数年間の経験を積んだあと、2002年にはパレ・ド・トーキョーで「パヴィヨン・ヌフリズOBC」のプロデューサー、後にパレのゼネラル・コーディネーターを歴任しました。また、イル・ド・フランス州現代アート基金「Le Plateau」のゼネラル・マネージャーを2007年から2011年にかけて務めています。現在はフリーのアート・プロデューサーとして活躍し、母校であるパリ・ドフィーヌ大学でアート・マネージメントを教えるとともに、コンサルタントとして日仏のアーティストおよび国立ギメ東洋美術館、パリ国際芸術都市(シテ・アンテルナショナル・デザール)、パレ・ド・トーキョー、フランス公立現代アート基金(FRAC)連合協会「Platform」、フランス現代アート連盟(CIPAC)などの様々な文化、アート機関と仕事をしています。
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