ラーメン史に間違いなく名を刻む“フルコース”ラーメン、堂々たる日本料理の誕生。

投稿日:2018/01/20 7:30 更新日:

ラーメン官僚(田中一明)の「麺レポ!」

田中一明[著・写真]/ GourmetBiz編集部[編]

東京・代々木八幡「季織亭」は、2017年3月、代々木八幡の住宅街に劇的な復活を遂げた経堂の名店。
新しい店舗の場所は、代々木上原駅と代々木八幡駅の中間地点近傍。閑静な住宅地のド真ん中で、民家をそのまま活用する形で営業している。
ここに店舗があることを知らなければ、ほぼ100%気が付かないであろう場所であり外観だ。

3,800円で3種類の麺メニュー(それぞれ麺量50g)が楽しめる「手打小麦そば懐石」も、ラーメン好きの中で好評を博している。

コース料理『手打小麦そば懐石』は、3,800円。ラーメンとして考えれば高額だが、懐石料理のひとつと考えれば、破格とも言うべきコストパフォーマンスの高さ。

コース内で3種類の「小麦そば」(いわゆるラーメン)が提供されるほか、前菜や黒米卵ごはん、さらにデザートまで付いてその価格なのだから、まさにお得としか言いようがない。

前菜(2017年10月来店時)

小麦そば つけ

黒米卵ごはん


店主による創作料理である「黒米卵ごはん」の美味さが極めて印象的。黒米の風味と卵の風味との相性が、想像以上に良好。

「汁なし担々麺」


「汁なし担々麺」は、オリジナリティの高さと味の良さとが見事に両立した傑作!
辛味とうま味のバランスの取り方から、合わせる麺の食感に至るまで、完璧に計算されており、ひと口で魅せられてしまった。
このひと品を提供するだけでも、十分、人気店になれるのでないかと思うほど並外れた1杯だ。

「温かい小麦そば」

総じて、近隣の方のみならず、遠方からでも足を運ぶにふさわしい絶品。美味いのひと言で片付けてしまうのが勿体ないほど、美味かった!

内容は季節ごとに様変わり。ステーキ付きメニューも極上。

「手打小麦そば懐石」には「ステーキ」付きメニューもある。

「手打小麦そば懐石」の内容は、その時々の季節や入手できる素材によって、様変わりする。

前菜(2018年1月来店時)

今回(2018年1月来店)の構成もまた、改めて申し上げるまでもなく「素晴らしい」のひと言!
三種類の「小麦そば」はもちろん、提供される全ての料理が、素材の持ち味を「これでもか!」と言わんばかりに活かしたものばかり。


特に、小麦そばの3品目は、野菜の素材感を十二分に打ち出しながらも、味噌の芳香がフワリと鼻腔をくすぐる絶品。
チャーシューに用いている豚も、ドングリのみを食べて育った最高級のイベリコ豚だ。
あと、ステーキも美味かった。久しぶりに上質な肉をいただくことができて感涙。

これらを、わずか5,000円弱で楽しむことができる贅沢。

事前に予約し席を確保することも可能だが、席が空いていれば、予約をしなくても入店することが可能。ラーメン好きの方はもちろん、そうではない方も是非、万難を排して足を運んでみていただきたい。

ラーメン1杯からオーダー可能

また、アラカルトメニューとして提供されている「手打小麦そば」だけを注文することもできるようになっている。

『塩』は、スープから具に至るまで全てキジ(雉)を使用。

食味が上品で薫り高く、それでいて、うま味に落ち着きを感じさせる「雉」。

「手打小麦そば 塩」


高度な調理技術がなければ、持ち味を十分に引き出すことがままならない「雉」を活かし切ったスープ、具のクオリティの高さは圧倒的であり、食べ始めから食べ終わりまで、終始、鳥肌が立つほど。
出汁の滋養味で食べ手の箸を止めさせない稀有な技量が尽くされた1杯は、もはや、堂々たる日本料理の一種と捉えるべきだ。

当然美味いが、それを超えた+αを感じる稀有な1杯。

ちなみに、雉は、アラカルトメニューの「醤油」か「塩」のいずれか一方に用いることとしているそう。詳しくは店主さんにご確認を。

「小麦そばつけ」


こちらは、経堂時代から完成度の高さに定評があった自家製麺を、心ゆくまで堪能できる1杯。
つけダレをシンプルに徹させることで際立つ、麺本来の味わい。

東京・代々木八幡「季織亭」の「手打小麦そば懐石」は、ラーメンという料理の新たな可能性を肌身で実感することができるだろう。
今後、フルコースのように食す「コースラーメン」を提供する店舗は増えるかも知れないが、間違いなく『季織亭』は、唯一無二の存在として、ラーメン史にその名を刻むことだろう。

田中一明さんのプロフィール

田中一明(通称・ラーメン官僚かずあっきぃ)
1972年生まれ。東大卒の現役官僚でありながら「超・ラーメンフリーク」として年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。現在までの通算杯数は13,000杯に迫る。
テレビ番組への出演や、雑誌やムック本の監修を行ない、ラーメン情報を精力的に発信している。
「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条を持ち、新店から老舗に至るまで、47都道府県の店舗を探訪。信頼度の高さに定評がある。

※こちらの記事は、田中一明さんの了承を得てfacebook投稿から引用し、再構成したものです。田中さんのfacebookページはこちら

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